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大切な手を守る「防護手袋」と「耐熱手袋・耐寒手袋」について知る

2020年11月20日
「耐熱手袋」と聞いて、イメージする手袋はどんなものでしょう?文字通り熱に強い手袋のことですが、熱いものに使うイメージがあるかもしれませんか?この記事のタイトルでは区別できるように「耐熱手袋・耐寒手袋」としていますが、耐熱には低温に耐えるという意味もあり、「耐熱手袋」は高温・低温のいずれかから(種類によってはどちらにも)作業者の手をガードします。

耐熱手袋は、製鉄所やガラス工房で使われたり、消防士が火災現場で使用したり、-196℃にもなる液体窒素を扱ったり…身近なところではキャンプやバーベキューの調理でダッチオーブンやスキレットを掴むために使うこともあります。実にいろいろなシーンで活躍していますが、目的に適した材質や形状になっています。そんな耐熱手袋のJIS規格や、用途に適した選び方などを調べてみました。

防護手袋とは?

防護手袋とは、「作業者の手や手首上部を、切創等の災害から守る目的で作られた手袋」のことです。熱、振動、切創、電気、化学物質などの危険有害因子より手を保護することを目的とした手袋で、危険有害要因から手を保護するため、適切な防護手袋を選択し、正しく使用する必要があります。

主な目的に応じて以下のような手袋の種類があり、日本産業規格(JIS規格)や国際規格が定められているものがあります。JIS規格や国際規格の試験をクリアして認証を受けた手袋であれば「安心」ですよね。

耐熱手袋にも「熱風循環炉による耐熱性」というJIS規格と国際規格が定められていますが、その前に耐熱手袋の種類を見ていきましょう。

電気絶縁用手袋

JIS T8112 電気絶縁用手袋
電気工事などで作業者を感電の危険から守るために使用する手袋。労働安全衛生規則によって高圧・低圧の活線作業では絶縁用保護具の使用が義務付けられています。

溶接用かわ製保護手袋

JIS T8113 溶接用かわ製保護手袋
溶接、溶断作業において、火花、溶融金属、熱せられた金属などが手に直接接触することによる傷害を防止するための手袋。

防振手袋

JIS T8114 防振手袋
手腕かかる局所的な振動から守る手袋。グラインダーやチェーンソーなどの振動工具を長時間使用することで手腕の痺れや痛み(振動障害)を予防する。

化学防護手袋

JIS T8116 化学防護手袋
酸、アルカリ、有機薬品などの化学薬品の汚染から手を保護する手袋。対象とする有害な化学物質を考慮して作業に適した手袋を選択することが重要。

耐切創手袋

国際規格・試験のEN 388:2016(ISO 23388)は、主に耐切創手袋に用いられる規格です。
耐切創繊維(切れにくい機能性繊維)を使用し、手や指を切る切創事故から手を保護する手袋。刃物やガラス・鉄板を扱う作業で使用され、耐切創強度や繊維特性により種類豊富。

耐熱・耐寒手袋

溶接や消火など加熱物を取り扱う作業で、手を高温・熱から保護する耐熱手袋。寒冷な環境でも冷たさを感じず、保温性に優れ高い作業性を実現する耐寒手袋。

使用する環境に応じて、耐熱手袋を選ぶ

超高温の熱い環境や超低温の冷たい環境から手を保護するための大切なツール・耐熱手袋。主に工場・製鉄所・食品加工工場・ガラス加工工場・消防・災害といった高温環境や、冷凍庫内(倉庫や工場など)での作業・冷凍食品の取り扱い・漁業・液体窒素などを使用する環境といった低温環境で着用します。耐熱手袋は用途に合わせて正しく使用することで効果を発揮し、高温や低温環境から作業者の手をしっかりと保護してくれます。
  • 高温環境で使用するなら、高温対応の耐熱手袋を選ぶ
    一般向けの耐熱手袋の耐熱温度は200°C〜300°C、溶接や鋳造などのプロ向け手袋の耐熱温度は500°C~1000°Cと幅広い種類があります。高温作業時の耐熱手袋の耐熱温度は、300度以上のものを選ぶようにしましょう。工場などでの溶接作業で飛んでくる火の粉や、熱く熱せられた器具を扱うときの高熱から、耐熱手袋が作業者の手を火傷から守ります。
    また、厚手のものでは作業がしずらくなってしまうため、厚さの確認も大切です。生地が厚手であればあるほど熱が伝わりにくくなりますが、細かい作業があるなら耐熱温度の高い高性能な薄手の手袋を選ぶとよいでしょう。

  • 低温環境で使用するなら、低温対応の耐熱手袋を選ぶ
    冷凍庫内での作業、冷凍食品の陳列、漁業、液体窒素などの液化ガス取扱作業など
    冷凍庫内(倉庫や工場など)での作業・冷凍食品の取り扱い・漁業・液体窒素などを使用する環境では、耐寒性能が重要です。特に液体窒素のような超低温物質を扱うなら、必ず耐寒手袋を使用しましょう。

  • 食品や精密機器を扱うなら、耐熱プラス防塵機能
    防塵機能とは、手袋を使用中に繊維クズなどの塵(チリ)が出ないことです。食品製造などを扱う現場はもちろん、精密機械を取り扱うクリーンルームのような環境でも、異物が混入しないように防塵機能を備えた手袋を選びましょう。

  • 熱湯や水を扱うなら、耐熱プラス防水機能
    耐熱手袋は防水機能を備えていないものも多く、水に濡れると染み込んできてしまいます。熱湯を扱う調理場などでは、手袋から染み込んだ熱湯で火傷することもあります。必ず防水機能を備えた手袋か、確認して選びましょう。また、防水機能を備えていない手袋は水に濡れると劣化しやすくなるため、正しい使用方法とお手入れ方法を守ってくださいね。

  • キャンプやアウトドアで使うなら、薄手タイプ
    バーベキューや焚き火などのように、火を使うアウトドアでも耐熱手袋を使うことがあります。溶接や鋳造のようなプロ向け手袋を選ぶ必要はなく、調理や火の扱いがしやすいように、手先が動かせる薄手タイプがおすすめです。薄手タイプなら持ち運びもしやすいですよ。

ロングタイプか、ショートタイプか

耐熱手袋には、手首の長さまでのショートタイプと、肘のあたりまでカバーするロングタイプがあります。

ショートタイプは一般的な軍手や手袋を同じくらいの長さで、指先から手首までカバーします。コンパクトに収納でき、携帯性に優れています。キャンプやバーベキューなどのアウトドアでも使いやすいサイズです。

ロングタイプは食器洗い用のゴム手袋がイメージしやすいでしょうか。指先から肘のあたりまでしっかりとガードしてくれて、溶接や鋳造のように火の粉が飛ぶ環境ではおすすめです。また、熱湯などの液体を扱う環境でも、手袋の中に液体が入りにくいので安心です。反面、着脱しにくいことが難点です。基本的には厚手のものが耐熱性能も高くなりますが、求める耐熱温度と使い勝手を考えながら、耐熱手袋を選択してください。

ショートタイプでもロングタイプでも、自分に合ったサイズであることが前提です。大きすぎて脱げやすかったり、キツすぎて着脱しにくいものは事故につながる危険性があります。購入前に、自分のサイズと合っているか、必ず確認するようにしましょう。

耐熱手袋に使われている素材

耐熱手袋は用途に合わせて、牛革やアラミド繊維、ポリエステル、シリコンゴム、シリコン樹脂、綿など、さまざまな素材が使われています。
  • 耐久性が高く、溶接などの作業に使いやすい牛革
    昔から手袋の素材として使われている牛革はしなやかな耐久性があり、使うほど手に馴染むようになります。天然素材の牛革は品質に比例して価格も上がりますが、安価なものも多く、手に合うものはずっと使い続けられます。

  • プロ向け手袋に使われるアラミド繊維・セラミック繊維
    溶接や鋳造などのプロ向け仕様の手袋には、アラミド繊維・セラミック繊維といった素材が使われることが多いです。アラミド繊維は合成繊維のひとつで、耐熱性と強度に優れ、消防士の耐熱服にも採用されるほど引っ張りや切り裂きにも強い素材です。さらに強アルカリ・フッ素・リン酸以外の耐薬品性にも優れています。ただし、紫外線に弱いため、日光に当たらない場所で保管しましょう。
    セラミック繊維は安定した無機繊維で、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)を主成分とした人造鉱物繊維の総称です。リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)では1,000 – 1,500℃、アルミナ繊維では1,300 – 1,700℃と、特に耐熱性が強く、鉄鋼業など炉で作業するような環境でも使用できます。

  • 扱いやすく熱湯も撥水するシリコン
    シリコンは有機ゴムに比べて耐熱性・耐寒性に極めて優れ、150℃ではほとんど特性に変化がなく、半永久的に使用できます。耐油性、耐薬品性、耐溶剤性にも優れています。また、撥水性能のおかげで熱湯や水を扱う作業でも使用でき、水洗いして清潔に保管できます。食品加工工場での使用に向いています。反面、切り裂きや引っ張り、摩耗には弱いため、消防・災害・機械工場での使用はおすすめできません。

耐熱手袋のJIS規格と、一般社団法人日本消防服装・装備協会の自主規格

耐熱手袋には、ISO 17493:2000(JIS T 8023:2006)「熱防護服及び装備品−熱風循環炉を使用する対流耐熱性試験方法」という規格があります。この耐熱性試験は、熱による材質変化がないことを確認する試験です。消防士などが着用する防火服の生地が、熱による収縮が大きくなると防火服と防火手袋等との隙間ができ、そこから火炎や放射熱が入るおそれがあるため、熱による材質の変化がないことが重要だからです。日本防炎協会基準では、本試験が必須項目になっています。

耐熱性試験では、防火服を構成している生地(表地)を規定の温度(180℃)の熱風循環炉内に入れ、5分間放置し、外観上の変化、材料特性の収縮率及び耐熱性を評価します。

求められる性能

  • 溶融、滴下、分離、発火のいずれもしないこと。
  • 収縮率は、5%以下であること。

また、一般社団法人日本消防服装・装備協会では、防火手袋の技術上の基準として「JFCE 0030-2017(基準番号)」という自主基準を定めています。品質確認済みマークと「A」などの種別表示があればガイドライン対応製品であることが確認できます。

防火手袋の技術上の基準

  • AA:火災の建物内での消防活動に用いることができるもので、特に厳しい火災環境において使用するもので、耐水性を有するもの
  • A:火災の建物内での消防活動に用いることができるもので、厳しい火災環境において使用でき、かつ、活動のしやすさを重視したもので、耐水性を有するもの
  • AB1:火災の建物内での消防活動に用いることができるもので、厳しい火災環境において使用でき、かつ、活動のしやすさを重視したもので、耐水性を有するもの
  • AB0:火災の建物内での消防活動に用いることができるもので、厳しい火災環境において使用でき、かつ、活動のしやすさを重視したもので、耐水性を有さないもの
  • B:火災の建物外での消防活動やその後方支援等を行う場合に用いることができるもの

消防庁の「2017ガイドライン」とは?

総務省消防庁は、建物火災へ屋内進入する消防隊員が、より安全に消火活動を行うための個人防火装備に求められる機能及び性能、その試験方法を示すことを目的として、平成23年(2011年)5月に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」を策定しました。これが「2011ガイドライン」と呼ばれています。

ガイドラインでは、火災発生建物へ屋内進入する可能性のある消防隊員の防火服、防火手袋、防火靴、防火帽、防火フードを対象に、耐炎性・耐熱性等の熱防護性や、快適性、運動性等の機能について、消火活動を実施するうえで安全上必要と思われる一定の性能や試験方法を定めています。また、安全な着装方法などの基本事項と、メンテナンスなど取扱い上の注意事項も明記されています。
「2011ガイドライン」は平成29年3月にガイドラインが改定され、最新版は「2017ガイドライン」です。防火手袋に対しては、以下の2点が改定されました。

  • 手の甲側だけでなく手の平側にも同等の耐熱性が必要
  • 防水機能が必須

「2017ガイドライン対応」の耐熱手袋は、従来品より安全性が高いので、購入時の参考にしてくださいね。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン(改定版)より抜粋
(2)防火手袋
①耐炎・耐熱性能試験
現ガイドラインでは、消防隊員の活動性を重視し、手背側と手掌側の試験基準が異なっ
ていたが、消防隊員の安全性を向上させるため、手背側と手掌側の試験基準を統一するこ
とを、必要な性能として取り入れた。
②耐水性試験
消火活動時に熱水がしみこむことによる、消防隊員の火傷を防ぐことを目的に、必要な
性能として取り入れた。

出典:
総務省消防庁 消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン(改定版)

耐熱手袋の使い方と注意点

  • 使用上の注意点を守る
    耐熱手袋は、それぞれの製品ごとに用途や性能が異なります。耐熱温度や、使用上の注意点を確認して使用しましょう。

  • 熱温度は目安として過信しない
    耐熱手袋に記載されている耐熱温度は目安です。長時間、高温や低温の作業で使用してもOKというわけではなく、火傷などの事故防止を保証しているわけではありません。長時間の使用によって手袋内の温度が上昇する(下降する)こともあります。作業環境や使用方法によって耐熱手袋の性能が変わる可能性もあるため、耐熱手袋を過信せず、できるだけ短時間で作業を終えるようにしてください。

  • 防水性能のない耐熱手袋は、水分に注意
    防水性能のない手袋を水に濡らしてしまうと、性能が低下したり劣化してしまう恐れがあります。濡れてしまった耐熱手袋は、製品の使用上の注意点に従って取り扱ってください。

  • インナー手袋を使用することも
    熱伝導を遅らせて、耐熱性能を高めるために、耐熱手袋の中に軍手などをつけることもおすすめです。綿でできた軍手は熱で溶けることもないため、インナー手袋に向いています。また、耐熱手袋に「綿製手袋の上に着用すること」といった注意書きがある場合は、必ず装着しましょう。

従業員の健康を守るために、耐熱手袋を購入・交換しませんか。

規格を知ると、手袋に表示されたマークをしっかり確認できるようになりますし、購入するときに手袋を比較して選べるようになります。防護手袋はしっかりと安全性能が確認されたものを使用したいものですね。

クロスワーカーでは使用目的に応じた防護手袋を多種多様に揃えています。法人さまの購入ご相談はメールで承っておりますので、お気軽にお問い合わせください♪

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