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夏の衣類・マスクは『接触冷感』が快適!冷感の仕組みを徹底解明します‼︎

2021年2月5日
触るとひんやり♪涼しく感じる『接触冷感』。夏の必需品でもある高機能素材が誕生した背景には、今ではすっかり定着した「クールビズ」が関係しています。

以前の日本のビジネスマンは、真夏でもスーツにネクタイ姿が一般的でした。高温多湿の厳しい環境で、暑苦しいスーツを着るわけですから、オフィスのクーラーはフル稼働です。そこで、2005年(平成17年)に夏の電力不足解消のための節電アクションとして、政府が軽装の服装を着用するように「クールビズ」というキャンペーンを提唱したのです。電力の消費量を抑えてCO2排出を削減する地球温暖化防止の一環として、毎年5月1日〜9月30日の期間がクールビズ実施期間としました。

クール・ビズ(COOL BIZ)とは、「涼しい」や「格好いい」という意味のクール(英語:COOL)と、仕事や職業の意味を表すビジネス(英語:business)の短縮形であるビズ(BIZ)を掛け合わせたものです。こうして日本のビジネスマンにノーネクタイ・ノージャケットのスタイルが浸透していきました。

世界に先駆ける日本の繊維メーカーが『接触冷感』素材を開発することになったのも、このクールビズによって政府の後押しもあり、より涼しく快適な衣服が求められたからです。

こうして開発された接触冷感素材を使った衣服やマスク、シーツなどが、自宅にある方も多いでしょう。でも、『接触冷感』素材がどんなものなのか、知っている方は少ないのではないでしょうか。

接触冷感って、どうして着ると涼しく感じるの?
冷感の仕組みってどうなってるの?

それでは、今回は接触冷感について掘り下げてみましょう。

参考:環境省 COOL CHOICE(クールチョイス)

『接触冷感』は、生地が冷たいわけじゃない!

接触冷感と聞くと、「生地やモノ自体がひんやり冷たい」だと思いませんか?

それ、間違いなんです。

接触冷感とは、生地やモノに触れたときに冷たく感じる「感覚」のことです。接触冷感のメカニズムは、「肌から熱を奪う」ことです。

この特性から熱中症対策にも効果的で、環境にやさしいエコな素材でもある接触冷感素材。ひんやりと感じるポイントをもう少し詳しく見ていきましょう。

触れるとひんやり冷たいと感じる、3つのポイント

熱伝導率と熱拡散率

熱は高い方から低い方へ移動する性質(熱伝導)があり、温かい肌が冷たい物体に触ると、物体の方に熱が移動します。肌に素材が触れた時に、肌から素材に熱が移動する量が多いと「冷たい」と感じます。肌から多くの熱が移動する=熱を素材に奪われている、ということです。さらに移動した熱をすぐに拡散すると、熱がこもらずひんやり感が続きます。
つまり、接触冷感素材のように熱伝導率と熱拡散率が高い素材は、多くの熱を素早く奪い、奪った熱をすぐに拡散することで冷感効果をもたらしているのです。

繊維に含まれる水分

接触冷感素材は熱伝導率・熱拡散率の高さだけでなく、吸水性と発散性の高さも重要です。
繊維の中の水分を素早く吸収・拡散して、気化熱を奪う作用が働くことも、ひんやり冷たく感じるポイントです。水分を多く含む親水性の高い素材は、素早く水分を吸収し、繊維の中の水分を発散させる時に周囲の熱を奪う作用が働くため、生地の内部を快適に保つことができます。そのため、接触冷感の生地には吸汗速乾といった機能も重要なのです。

触った時のシャリ感

触れた時に涼しく感じ、清涼感のある風合いのことを「シャリ感」と表現されますが、シャリ感のある天然繊維の代表格は、麻(リネン)です。少し硬さを感じる触り心地は古くから接触冷感のある素材として、夏の衣服やシーツに使われています。

熱の移動量は、最大熱吸収速度(Q‒max)で評価される

熱の移動量は最大熱吸収速度(Q‒max:キューマックス(W/cm2))で数値化されていて、接触冷感の評価値と考えられています。この値が高ければ高いほど熱が移動する量が大きいため、肌に触れている部分が冷たいと感じます。冷たいと感じる数値は、0.2W/cm2以上が目安とされています。

接触冷感の宣伝・広告などでQ‒maxを見かけたことがあるかもしれませんが、目安とされている「0.2」は実際どれくらい冷たいのでしょうか?

例えば、夏に触ると冷たく感じるコンクリートのQ‒max値は、なんと0.6という高さ!生地素材の中では、ポリエチレン(0.45〜)や、夏の代表的な繊維・麻(0.35〜0.4)が高いQ‒max値です。

また、綿はQ‒max値が0.1〜0.2程度しかないため、触ったときのひんやり感はありません。しかし、キシリトール樹脂を繊維にコーティングしたり、熱伝導率を高めて接触冷感性能を持たせた素材があります。他にも金属や鉱石を応用して、接触冷感を生み出しているものもあるんですよ。

Q‒max値 冷たさの目安(筆者の主観)

0.4以上 かなりひんやり!!
0.3以上 普通にひんやり!
0.2以上 優しいひんやり

0.5以上ともなると、強くひんやり感を感じることができると言われています。

このQ‒max値は、以下のようにして測定されます。

JIS L 1927試験方法

室温と試料を同じ温度に設定し、室温の+10°C(ΔT=10°C)に加熱した測定部を室温の試料に接触させ、瞬間的な熱吸収速度を測定します。

参考:一般財団法人カケンテストセンター 接触冷感性試験
繊維
Q‒max(W/cm2)
ポリエチレン
0.45~

0.35〜0.4
ナイロン
0.3〜0.35
レーヨン
0.3〜0.35
ポリエステル
0.3〜0.35
キュプラ
0.3~0.35

0.3
綿
0.1~0.2

Q‒maxが高くても、冷たいと感じないこともある…

Q‒maxは、肌から素材(生地)が奪う熱量の大小を測定する指数です。そのため、極論を言えば熱伝導率の高い繊維を使い、生地の密度を上げて、さらに厚地にすれば、伝導率・拡散率が高くなり、Q‒maxの値も高くなります。

シーツやベッドパッドなどに使う接触冷感生地なら、それでもいいかもしれません。でもいくらQ‒max値が高くても、通気性が低く厚地の生地はインナーやマスクには向いていません。

涼しさには、接触冷感以外にも、風の通りが良かったり、汗をよく吸って乾きやすくカラッと感じられるような要素も重要です。ポリエチレンはQ‒max値がとても高いですが、吸湿性・吸水性がないため、体から出た汗を吸収することができず、シーツやベッドパッドの素材には向いていません。

また、接触冷感はあくまでも「触ったときにひんやり感じる」効果。ずーっと冷たさが続く効果はありません。ただ、接触冷感のインナーや衣服では、肌と生地がずっと触れ合い続けることは少ないため、冷感が比較的ずっと感じられるかもしれません。シーツやベッドパッドでは寝ている時の動きが少なく、肌と生地が触れ合い続ける時間が長くなり、冷感が感じられにくくなります。

接触冷感機能のついた製品を選ぶときは、Q‒maxは参考までに確認し、通気性や、吸汗速乾性があるかもチェックするようにしましょう。
接触冷感の仕組みや、繊維のQ‒max値、いかがでしたか?

夏にひんやり気持ちがいい接触冷感素材を使ったインナーやマスクは、熱中症対策や暑さ対策に効果的です。暑い季節には大活躍してくれること間違いありません。

今年の夏は、クロスワーカーで接触冷感素材のアイテムを準備して、暑い夏を乗り切ってくださいね!

クロスワーカーでは働く皆さまの安全・安心・健康を第一に、2021年の暑さ対策・熱中症対策・災害対策に関する最新商品や、夏の対策に役立つ情報もご紹介しています。
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