作業靴の規格を知る~JIS合格品・安全靴と、JSAA認定品・プロテクティブスニーカー
2020年11月27日
先芯の入った安全靴や作業靴には、「JIS(日本産業規格)」と「JSAA(公益社団法人日本保安用品協会)」という2つの規格があります。JIS合格品は「安全靴」、JSAA認定品は「プロテクティブスニーカー(プロスニーカー®)」または「プロテクティブブーツ(プロブーツ®)」の名称が使用できます。
ただし、「安全靴」は先芯が入っている靴すべてを指していることもあるため、注意が必要です。JIS合格品かどうかの見分け方を後述しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
ただし、「安全靴」は先芯が入っている靴すべてを指していることもあるため、注意が必要です。JIS合格品かどうかの見分け方を後述しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
JIS合格品・安全靴とは
日本産業規格(Japanese Industrial Standards)は産業標準化法に基づき制定される規格で、日本の国家標準の一つです。安全靴に関係する規格としては、JIS T8101:2020(安全靴)、JIS T8103:2010(静電気帯電防止靴)があり、JIS T8101:2020は、ISO 20345:2011、ISO 20346:2014に対応しています。JIS T8103:2010は、対応国際規格は現時点で制定されていません。
- JIS T8101(安全靴)
JIS T8101が定める安全性をクリアした靴(合格品)は、「安全靴」という名称が使用できます。 - JIS T8103(静電気帯電防止靴)
JIS T8103はクリアする電気抵抗地によって、「一般静電靴」「特殊静電靴」「導電靴」と区分されます。
労働安全衛生法・労働安全衛生規則によって、作業内容・環境に合わせた安全靴着用の義務が定められています。
JIS T8101 安全靴は「主として着用者のつま先を先しんによって防護し,滑り止めを備える靴」と定義されており、足先への重量物の落下や釘などの踏み抜きから作業者の足を守るため、甲被が牛革製または総ゴム製に限られ、先芯や中底が鋼板でできていることが特徴です。また、JIS規格合格品は、JSAAに比べ素材の耐久性など厳しい基準があり、高い安全性を誇ります。
JIS T8101 安全靴の規格
安全靴には材料区分や作業区分による種類があり、作業区分によって基本性能の基準値が異なります。
また、耐踏抜性や耐滑性などの付加的性能を加えることもできます。
また、耐踏抜性や耐滑性などの付加的性能を加えることもできます。
材料区分による種類
材料区分 | 内容 | 記号 |
クラスI | 甲被は革製とし、表底その他の材料から作られる靴 | CI |
クラスII | 総ゴム製(加硫式)または総高分子材料製(一体成形式)の靴 | CII |
作業区分による種類
作業区分 | 内容 | 記号 |
超重作業用 | つま先部の耐衝撃性200J、耐圧迫性15kNを満たす靴 | U |
重作業用 | つま先部の耐衝撃性100J、耐圧迫性15kNを満たす靴 | H |
普通作業用 | つま先部の耐衝撃性70J、耐圧迫性10kNを満たす靴 | S |
軽作業用 | つま先部の耐衝撃性30J、耐圧迫性4.5kNを満たす靴 | L |
※耐衝撃性は衝撃エネルギー、耐圧迫性は圧迫力を負荷したときの耐久性を示す。
付加的性能による種類
付加的性能 | 記号 | ||
耐踏抜き性 | P | ||
かかと部の衝撃エネルギー吸収性 | E | ||
足甲プロテクタの耐衝撃性 | M | ||
耐滑性 | 耐滑区分1 | F1 | |
耐滑区分2 | F2 | ||
耐水性 | W | ||
耐切創性 | C | ||
電気絶縁特性 | AC600V以下用 | I-600 | |
AC3,500V以下用 | I-3500 | ||
AC7,000V以下用 | I-7000 | ||
耐熱伝導性 | 靴底の高温熱伝導性 | 高温熱伝導性区分1 | HI1 |
高温熱伝導性区分2 | HI2 | ||
靴底の低温熱伝導性 | 低温熱伝導性区分1 | CI1 | |
低温熱伝導性区分2 | CI2 | ||
表底の耐高熱接触性 | H | ||
表底の耐燃料油性 | BO | ||
甲被の耐燃料油性 | UO |
基本性能(抜粋)
耐衝撃性能
つま先部に重量物が落下した時に、その衝撃から着用者のつま先を守る性能のことです。
質量20kgのくさび形の鋼製ストライカを種類ごとに指定された高さから自由落下させ、衝撃により変形した先芯と中底とのすきまの寸法を測定し、既定値をみたすかどうかを調べます。
JIS T8101合格品(安全靴)の見分け方
靴にJISマークおよびJIS認定番号などが表示されています。「安全靴」と紹介されていても、JIS規格合格品ではないこともあるので、購入時にJISマークなどが表示されているかどうか、確認してください。
また、安全靴の製品には靴のサイズ、製造業者の名称(または略号)、製造年月(または略号)、規格名称、基本性能と付加的性能や適切なカテゴリー表示をすることが求められています。
また、安全靴の製品には靴のサイズ、製造業者の名称(または略号)、製造年月(または略号)、規格名称、基本性能と付加的性能や適切なカテゴリー表示をすることが求められています。
例えば、クロスワーカーで人気のこの安全靴は、【 JIS T8101 革製 S種 E 】の合格品です。
それぞれの記号を、上に紹介した種類から読み解くと…
- JIS T8101は、JIS規格の番号です
- 革製は、「材料区分による種類」のクラスIに該当します
- S種は、「作業区分による種類」の普通作業用に該当します
- Eは、「付加的性能による種類」のかかと部の衝撃エネルギー吸収性のことです
以上のような性能がある安全靴だと分かります。
なおカテゴリー表示では、「P1」のように表記されますが、P1の安全靴は、クラス1(革製)であり、かつ基本性能(基本要件)の他に付加的性能として、かかと部の衝撃エネルギー吸収性 (E)、表底の耐高熱接触性 (H)、およびクリート付き表底の性能がある安全靴です。この「カテゴリー表示」については以下の表を参照してください(2つ目の表は、1つ目の内容からカテゴリー表示ごとに該当する性能を●表記でまとめたものです)。
JSAA認定品・プロテクティブスニーカーとは
公益社団法人 日本保安用品協会(Japan Safety Appliances Association)は、保安用品関連の業界団体で構成された団体であり、内閣府所管の社団法人です。協会が安全性能や耐久性を制定したJSAA規格=プロテクティブスニーカー規格やプロテクティブブーツ規格をクリアした靴を総称して、「プロスニーカー®」「プロブーツ®」と呼んでいます。
出典:公益社団法人 日本保安用品協会
出典:公益社団法人 日本保安用品協会
つま先を先芯により保護する軽作業靴のことで、「一定の安全基準や耐久性」を有する製品規格です。使用できる素材が多く、疲れにくく履き心地の良い靴が多くあります。
JSAA認定品・プロテクティブスニーカーの見分け方
型式認定に合格したプロテクティブスニーカーは、内側に「型式認定合格標章(マーク)」を表示することが規定されており、また外側にも「型式認定合格証明票」を取り付けた上で販売することになっています。
例えば、クロスワーカーで人気のこのプロテクティブスニーカー(プロスニーカー®)は、【JSAA規格 A種】の認定品です。
- A種は、普通作業用に該当し、JIS規格の安全靴ではS種(普通作業用)と同等です。
- 付加性能として、耐滑性、かかと部の衝撃エネルギー吸収性、静電気帯電防止性が付与されています。
以上のような性能がある安全靴だと分かります。
それぞれの規格の内容がわかったら、次は、JISとJSAAの規格はどう違うのか、比較してみましょう。
JIS(安全靴)とJSAA(プロテクティブスニーカー)の基本性能の比較
安全靴のS種(普通作業用)はプロテクティブスニーカーのA種(安全作業用)に相当し、安全靴のL種(軽作業用)はプロテクティブスニーカーのB種(軽安全作業用)に相当します。
試験時の中底と先芯のすきま
足のサイズ(cm) | JIS規格(mm) | JSAA規格(mm) |
23.0以下 | 12.5以上 | 12.5以上 |
23.5〜24.5 | 13.0以上 | 13.0以上 |
25~25.5 | 13.5以上 | 13.5以上 |
26~27 | 14.0以上 | 14.0以上 |
27.5~28.5 | 14.5以上 | 14.5以上 |
29以上 | 15.0以上 | 15.0以上 |